kmd-windorchestra’s diary

吹奏楽指導者(JBA会員)、作編曲者、中学校教諭のブログ(吹奏楽指導、作編曲依頼はメールでご相談を)

「Diamonds <ダイアモンド>」を少しだけ語る

「Diamonds <ダイアモンド>」(プリンセスプリンセス

1989年4月21日リリース 作詞:中山加奈子 / 作曲:奥居香


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ラストライブ(2023年デジタルリマスター版)

 

 この曲が本当に好きです。今、聴いても新鮮だし、名曲の中の名曲だと思います。プリプリのパフォーマンス力もヒットの要因ですが、曲も詩も秀でているのが「Diamonds <ダイアモンド>」の凄いところであります。勝手ながら独自の視点で少し語ります。徹底的に語ると1時間とか平気でしゃべれると思います。

※歌詞を部分的に引用させていただいています。

 

 Aメロ

 ここからはあえて「inC」のキーで書きます。最初からC、Cmaj7、C7、F・・・と「クリシェ」が見られます。いわゆる「エモい」感じを出す効果がいきなり登場します。軽快なベースラインも心地よい。

 Bメロ

 王道コード(F、G/F、Em、Am)が来ます。これもよく見られる手法ですが、FからGに行くときにベースはFを保持します。プリプリとは関係ないですが、TAKARAJIMAでも同じコード進行が見られ、「エモい」感じなります。またベースラインのリズムパターンが変化して浮遊感が漂うのもナイスアイディアです。

 サビ

 歌詞でいうところの「AH」というところ。単なる掛け声というか、コーラスと考えていたら大間違い・・・。合唱曲で有名な「群青」でも言われることですが、「ああ」「AH」の類は言語化できない作中人物の想いです。こういった独立語は感情の爆発なのです。「ダイヤモンドだね AH いくつかの場面」とありますが、この時点では何がどうダイヤモンドなのかが絞り切れていません。でも、想いが溢れている。1回目の「AH」はGmです。底抜けで明るいわけではないのがポイント。その後、GmからFに進行します(マイナーコードからメジャーコードへ行くわけです)。ダイヤモンドのように輝くものはあるけれど、その正体はまだぼやけているからこそのマイナーコードの響きなのかもしれません。GmからFに進んだ後の2回目の「AH」は、Fmに進みます。コード内の第3音のみ変化していくさまがこれまた「エモい」わけです。Fmのあとはメジャーコードが連続します。ここも歌詞とドンピシャで余っています。「うまくいえないけれど ダイアモンドだよ」とあります。マイナーコード=うまく言えない葛藤、メジャーコード=ダイアモンドとリンクするわけです。サビのコードを単体で見ても歌詞とのリンクが絶妙ですが、数小節単位で見ていくとAメロ同様に「クリシェ」が見られます。ベースラインが半音ずつ下降していく構成も素晴らしい。

 

 コードの色合いを感じやすいのはピアノ弾き語りバージョンです。ピアノ弾き語りも素敵すぎる。作曲家自身によるリアレンジがピアノとヴォーカルの良さを引き出しています。↓


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 転調後の最後のサビ

 J-POPあるあるの半音上げの転調。竿もの楽器からしたらさほど難しくないのかもしれませんが、管楽器でこれをやるとなると結構大変…。吹奏楽ポップスではあまり半音上げの転調は好まれません(笑)

 とはいえ、最後の盛り上がりに半音上げの転調は効果的。歌詞の世界観にも変化がみられるのです。「何も知らない(AH)子供に戻って(AH)やり直したい夜もたまにあるけど」と後悔の念かと思いきや、「けど」でつないで「あの時感じた(AH)気持ちは本物」と肯定するのです。そして、「私を動かすのはダイアモンド」と結びます。転調前である1番のサビ、2番のサビでは前述の通りの絞り切れていないダイアモンド像や「私を動かしてる そんな気持ち」というどこか抽象的な概念でした。それが直接的に「(今)私を動かすのはダイアモンド」と体言止めで結ばれているレトリックもお見事です。

 思いのままに語りましたが、コード進行と歌詞のリンクという素晴らしさが名曲の裏にはあるわけです。国語と音楽にちょっと精通しているので気づくことができる世界だと考えています。これぞ芸術の楽しみ方です。私はなぜか自分の生まれた頃の音楽に輝きを感じます。プリプリだったりT-Squareだったり…。スマホもないこの時代にこういった音楽に囲まれて青春時代を送ってみたかったとさえ思ってしまいます。このころに青春を迎えた方は50歳前後になるでしょうか。その時代に生きていたことがうらやましい。そろそろ2000字に到達しそうなので今日はこの辺にしておきます。最後におまけです。わりと近年の動画にこんなものもありました。名曲は歌い継がれるわけです。


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