日本吹奏楽指導者協会(JBA)主催の第42回吹奏楽ゼミナールに3日間、勉強してきました。今年は、運営サイドが少し変わって内容もリニューアルされていました。会場もここ数年は名古屋音楽大学での開催でしたが、今年は大阪の明浄学院高等学校に変わりました。JBAの関西支部が準備や運営で尽力してくださいました。感謝です。非常に濃い3日間でしたのですべてを記すことはできませんが、復習をかねて講師の先生方のお言葉を中心にまとめていきたいと思います。こういった内容を読んで吹奏楽ゼミナールに興味を持って来年以降のゼミナールに参加する人が増えると私自身もJBA会員の末端として嬉しく思います。
1日目
まず新幹線が遅れていました。帰省ラッシュのスタートと重なって新横浜は大混雑でした。新大阪には45分遅れで到着したのでお昼ご飯を食べる間もなく、現地へ急行しました。なぜなら最初の講座に送れるわけにはいかないからです。最初の講座は保科先生に「リハーサルクリニック」でした。保科先生の「風紋」を使っての合奏を見ることができました。モデルバンドは明浄学院高等学校吹奏楽部の皆さんでした。リハーサルクリニックに続いて中級の指揮法も続いていきます。
「大切な音はどれか見つけてつなげていく」
「指揮者は音色を相手に伝えていく」
「指揮者は作曲家の代弁者」
「fとpの間にmfとmpしかないの不便」
その次の講座は洗足学園音楽大学教授でいらっしゃる伊藤康英先生の「楽譜の読み方・書き方」の講座でした。日本が世界に誇るまさに有識者です。個人的なことですが、その昔に音楽大学を目指そうかなと「3分くらい」悩んだことがありました。そのときに洗足学園音楽大学に行って伊藤先生のもとで学びたいと思っていました。色々あって3分後には国語の教師を目指すべく音楽大学には進学しない意思を固めましたが(笑)。短時間の講義とはいえ、こうやって伊藤先生から音楽を学べることは喜びです。
「民謡などの歌詞に迫ると音楽表現やフレーズの繋ぎ方が見えてくる気がしませんか」
その次は「ハラスメント講座」でした。今の世相を反映した講座でした。職場の研修のよう・・・。だけれど吹奏楽指導の中で起こりうる問題を洗い出しました。とかく先生、顧問、指揮者というのは高い立場になりますから気を付けないといけません。
「今後は、それぞれの団体に弁護士や法学部卒業の方が必要になってくるかもしれません。」
その後は情報交換会ということで受講生と講師が交流する場がありました。全国各地、あるいは今回は海外からの参加者もいましたがリラックスした状況で交流することができました。鈴木英史先生や八木澤教司先生と直接お話することもできました。八木澤先生には勇気を出して記念撮影のお願いもしました。一生の宝です。
2日目
中級指揮法ということで講師は伊勢敏之先生でした。イギリス民謡組曲を題材に受講生が次から次へと指揮をします(昨年は受講しましたが、今年は聴講です)。先生のアドバイスで指揮が改善されると音楽も変わってくるから不思議なものです。その後は中級を抜け出して初級の講座に行きました。聴講だけならコースの枠を超えても良いことになっています。そして八木澤先生の楽典基礎を2時間受けました。先生のご著書は朝読書で読んでいるので、その内容の復習のような感じでした。ご本人から解説していただけるのは本当に幸せなことです。
「知識があれば良い指導ができるわけではない」
「知識だけで心は動かせない」
「自信ある裏付け、納得を伝えていくことが大事」
お昼を挟んで次は「バンドトレーニング法」です。明浄学院高等学校の小野川総監督の日頃の指導を見させていただきました。いわゆる基礎合奏は行わないスタイルでした。そういうところでは本校吹奏楽部と同じでした。「元祖 ユニゾン音列」で息の流れを確認することや「イヤートレーニング」で耳を鍛えることをシンプルに磨き続けているとのことでした。私が全くできていない部分としては「パートレッスン」でした。平日などにパートごとに総監督が直々にレッスンをしてそれぞれにワンポイントアドバイスをしていくのです。
「プラモデルでいえばパーツを組み立てる前に色をつけていく」
その次は「スコアリーディングから分析へ」ということで伊藤康英先生による120分の講座でした。最前列で受講しました(笑)。移調楽譜を読むというトレーニングを全体で行いました。テノール記号、メッゾ・ソプラノ記号となると頭を使います…。ただ、幸いなことに私は昔からフルスコアを読んだり書いたりしていたので得意なのです。ピアノや声楽の方は苦労される道ですよね・・・。伊藤先生の面白いところは知識が豊富すぎてスコアリーディングから話が脱線するところです。その脱線先が非常に勉強になるのです。世界的ヴァイオリニストのアイザック・スターンさんがお弟子さんに言う言葉を紹介してくださいました。
「モーツァルトのオペラを聴きなさい」
盛りだくさんの2日目最後は楽器指導法の選択講座でした。私はJBA会長でいらっしゃる山本真理子先生の「打楽器指導法」を選びました。私の日頃の打楽器指導のいい加減さと言ったらすごいもので本校吹奏楽部のパーカッションパートには申し訳ないくらいです。ある別の受講生の先生から「打楽器にお詳しいのに打楽器講座に行くんですか?」と言われてしまいました。打楽器アンサンブルを毎年のように書いて、JPEC全国大会にも二度出場していることが独り歩きしています。地元の地区では打楽器に精通していることになっているという怪しい情報もあります…。これは危険ということで打楽器講座を受けました。「打感音」というイメージを持たせる工夫を教わりました。
「暖かいリンゴの手拍子」
「冷たい氷の手拍子」
これだけで音が違うのです…。これはすぐに現場でも試してみたいところです。
3日目
最終日は、半日日程。特別講座「世界に学ぶ吹奏楽の可能性」ということで伊藤康英先生が世界吹奏楽会議などの話を中心にしてくださいました。もちろん日本の吹奏楽のレベルは上がってきているのですが、国際的に見ると非常に閉鎖的であることに警鐘を鳴らしていらっしゃいました。海外ではコンクールの審査員は外国人が担当、表彰式はフェスティバルのような雰囲気であるのことです。伊藤先生は積極的に海外の指揮者、作曲家を日本に招いて「つながり」を作られています。先日の洗足学園音楽大学での演奏会は世界中が注目しており、すでに1万回以上再生されています。私はすでに拝聴しましたが、今までの吹奏楽の価値観が変わるものでした。
Alarcón conducts Alarcón -
グリーン・タイ ウインド・アンサンブル演奏会
最後の講座は選択制の「Q&A」でしたので、私は鈴木英史先生の「スコアリーディング」を選びました。この2日間で鈴木英史先生とは情報交換会でお話しただけで講座を受けていなかったのです。
「メシアンの第二旋法」の話が出てきたときに「天野先生が良く使うよなぁ」と考えていたら「天野さんがよく使うやつ」と鈴木先生からもお言葉がありました。自分もちょっとは講座について行けていることを確認できました。 「メシアンの第二旋法」の余談で「飯庵」という分かる人にしか分からないパワーワードがあることを知りました(教室の後ろにいた伊藤康英先生が反応)。最後は伊藤先生も少し講座の中に入って、お二人の大作曲家から色々なお話を聞けました。
「井戸振り見えろ」(旋法の覚え方)
ダイジェスト版でまとめた第42回吹奏楽ゼミナール。私が選択しなかった講座も当然あるし、受講生同士のやり取り、情報交換会でもやり取り、展示ブースのことなど書ききれないこともたくさんあります。3日目は半日日程ですが、午後には指導者認定試験もあります。今年は認定試験は受けませんしたので、そのことは書きません。すでに3200字を超えたのでダイジェスト版はここまで・・・!